写真をやっている人の中で、勉強の為にプロの写真家の写真集を買われる方は結構多いと思います。
もちろんそれは全然OKなんですが、今日は更にもう1歩踏み込んで自分の人生に新しい楽しみを見出すという意味での写真集の楽しみ方みたいな事をお話していきたいと思います。
「映画を見る」「芝居を見る」「野球を見る」「サッカーを見る」と同じ感覚で「写真(集)を見る」という行為があってしかるべきだと思うんです。
所が現状は積極的に写真集を見るという行為はあまりされていない様な気がします。
どんなに有名でファンもたくさんいる写真家でも、写真集の売り上げだけでは食べていけてないというのを見てもそれは明らかですね。
僕自身も写真集の楽しさに目覚めたのは最近の事ですが、今回はそんな観点から写真集の魅力や楽しみ方にせまっていきたいと思います。
目次
写真集の魅力
まず大前提として、写真と紙は相性が良いという事です。
写真というのはフィルムにしろセンサーにしろ、そこに焼き付けた映像をどこかに投影して初めてそれを鑑賞する事が出来ます。
スマホの画面やPCモニターで写真を見るのがほとんどで、中にはスクリーン上に映し出す事もあります。
その中で昔からあるのが紙に焼くという方法で、「写真」と言えば紙に焼いたあの写真を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
僕はどちらかと言えばデジタル時代の方が長く、写真を始めたのもデジカメからになります。
ですので紙の写真にはそこまで馴染みは無かったのですが、そんな僕が色んな形で写真を見てきた上で結論付けたのが写真は紙で見るのが一番良いという事です。
スマホの画面やPCモニターで見るよりも直接入ってくる感じがあり、そこには隔たりというものが存在していません。
一人の作家があるテーマについて写真で綴っている
写真集というのはそんな紙の写真が一冊の本になっており、一人の作家があるテーマについて写真で綴っているというものです。(こんなワクワクする事がありますか!)
後で説明しますが本というのは意外に色んな見せ方が可能で、写真というのはそういう見せ方によって見え方が大きく変わってきます。
個別の写真を色んな方法で組み合わせて新しい意味合いを見出すという編集の楽しさというものが写真集の魅力の1つになります。
色あせる所かむしろ熟成されていく
これは以前にもお話しましたが、写真というのは時間が経てば経つほど熟成されていくので、買ってから時間が経った写真集というのは「古い本」にはなり得ません。
むしろ輝きを増す事の方が多く、賞味期限というものが存在しません。
ですので「1回読んでそれで終わり」というものではなく、時間を置いてまたページをめくりたくなるという性質を持っています。
夜寝る前に「今日はどれを読もうかな~♪」と、写真集で埋め尽くされた本棚を眺めながら選ぶ時間は至福のひと時でもあります。(これは写真集に限らず知的好奇心を満たしてくれるものなら何にでも当てはまります)
オフラインだからこそいい
当然ですが写真集というのはオフラインの世界です。
オンラインと違って外部と遮断していますから情報は更新されませんし、写真が追加される事もありません。
写真集の場合はむしろその方が良かったりします。
「言葉の限りが世界の限り」という言葉があるように、何か一つの世界に触れたい時は「限り」があった方が、よりそこに浸る事が出来ます。
オンラインの場合は文字通りリンクが張られており、いつでも別の世界と接触する事ができるので、完全に浸りきるのが意外に難しかったりします。
試しに一冊買ってみよう!お気に入りの写真集の見つけ方
では実際に写真集を買ってみましょう。
そうなると意外につまずくのが、自分のお気に入りの写真集が見つからないというものです。
アマゾンで「写真集」と検索しても出てくるのはアイドル系の写真集ばかりなので、一から探す場合には不向きだったりします。
そこでまずはヤフーやグーグルで「好きな写真家の名前 写真集」で検索をしてみましょう。
その写真家が写真集を出していれば写真集の販売サイトが上位に出てくると思います。
もちろんそれが欲しければその写真集を購入してもOKです。
しかしここでは、それを入り口にして新たなお気に入りの写真集を見つける方法をお話していきます。
「好きな写真家の名前 写真集」で検索すると、アマゾン等の大型ショッピングサイトが表示されていると思いますが、狙うのは小規模のオンライン古書店やギャラリー、写真クラブ等の販売サイトです。
そういうサイトをクリックすると、好きな写真家の写真集以外にも様々な写真集がラインナップされていると思います。
それらラインナップされた写真集をチェックしていく事で、お気に入りの写真集が見つかるという具合です。
他にもハンドメイドサイトで「zine」や「写真集」と検索すると、自分で作った写真集を出品されている方がたくさんおられるので、そちらを利用しても良いと思います。
写真集の楽しみ方
そしてお気に入りの写真集が見つかって、一冊購入したとしましょう。
今度はその写真集の楽しみ方をお話したいと思います。
とは言え決まった見方がある訳ではありませんし、むしろ「こう見なければいけない」という決めつけは良くないのは重々承知していますが、一つのとっかかりとしてガイドライン見たいなものを示せればと思います。
基本は「組写真」
写真集というのは複数枚の写真の構成によって成り立っています。
それらの写真は決して適当に並べている訳ではありません。
意識している・していないに関わらず、何らか考えがあって並べられています。
一枚の写真を単発単発で評価するのではなく、複数枚の写真でトータルに見るという事が大事になってきます。
よくある勘違いで「プロの写真家の写真集は全てスゴイ写真ばかりなんだろう」というものがありますが、実際はそんな事はありません。
それを期待して見たら、がっかりしてしまうような写真もあります。
しかし複数枚で見た時、その写真が何らかの役割や意味を持っているという事が解ると思います。
そして例え単発写真をまとめた「作品集」的な写真集であったとしても、並べる順番というものは必ず考える必要があるので、そこには「組み合わせの妙」というものが出てきます。
難しく考える必要はありませんが、全体的な流れを感じながら見るだけでも随分と意味合いが違ってくると思います。
最初の一枚と最後の一枚
僕が写真集を買って、最初に見る時に楽しみにしている事があります。
それは最初の一枚目と最後の一枚の写真です。
表紙をめくり、遊び紙をめくって出てくる一枚目の写真。
それは始まりを意味するもので、作家によってどういう写真を持ってくるのか個性が出てくる所でもあります。
そして最後の一枚は旅の終わりや別れを予感させるもので、余韻に浸る時間でもあります。
写真集全てを読み解くのは難しい作業ですが、始まりである最初の一枚目と別れである最後の一枚をどうのように演出してくるのか?
それくらいなら色々と考えを巡らせる事が出来そうですね。
一枚一枚がっつりと見なくても良い
写真集は枚数が多いですから、一枚一枚じっくりと見ていくと途中で集中力が途切れてしまいますし、全部の写真を好きになるのは不可能だと思います。
最初はパラパラとめくりながら全体の流れを掴むようにして、気になった写真を吟味してみるくらいでOKです。
実用書みたいに自分の知りたい事を吸収できたらそれで終わりというものではなく、細く長く付き合っていくという感じなので、一気にがっつり見る必要はありません。
色々な見せ方がある
意外に気が付きにくいのですが単に同じ風に並べているだけではなく、よく見てみると写真にも色んな見せ方があるという事が解ります。
よく見かける例を挙げてみます。
片面に写真一枚で、見開いた状態で2枚の写真というのが基本になります。
この場合は二枚がペアになるので、そこを考えて写真を選んで行きます。
あえて片面のみに写真を配置する事もよくあります。
そうする事で、一枚の写真に集中させる事が出来ます。
同じ一枚でも見開きで一枚というパターンもあります。
これはかなり迫力があります。
更には余白無しで、ページいっぱいに写真を載せるというパターンもあります。
余白を無くす事で、かなり広がった写真になります。
中には1ページ丸まる白紙というパターンもあります。
本で言う所の新しい章に入る時に区切りとしてよく使われます。
これら以外にもページによって余白のスペースを広げたり、写真のサイズを変えたり等様々な見せ方があり、作家の意図が見え隠れします。
そういうのを手掛かりに「はは~ん、これはこういう意図があるのだな。」という具合に読み解いていく事が出来ます。
スマホやパソコンの場合はスライドショーで一枚一枚スライドしていくか、上から順番にスクロールしていくくらいしかパターンが無く、特にスマホの場合はサイズを変化させる事も難しいので、意外に単調になってしまいがちです。
しかし本の場合はバリエーションが多いので、表現幅は意外に広かったりします。
終わりに 紙に目覚めて欲しい
今は写真を見ると言えばスマホやパソコンモニターで見るというのがほとんどなので、紙にプリントして見るという機会があまり無いのかもしれません。
しかしやはり写真は紙で見るのが一番良く、単に「昔ながらの…」と言ったノスタルジック的な意味合いではなく、本当に紙と写真は相性が良いです。
まずは一冊でも構わないので、気に入った写真集を購入してみてください。
それをきっかけに紙の写真に目覚めてくれれば、これほど嬉しい事はありません。
次の記事で、実際に僕が今まで購入した写真集をご紹介しようと思います。
次の記事↓
このブログでは紙の写真に馴染んでもらう運動の一環で、「写真集を買おう!」という事を推しています。 ですので言い出しっぺの僕自身がどんな写真集を買ったのか?という…
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